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ショタ小説 -少年の戸惑い-

少年の恋に戸惑う心を綴ったフィクションです。登場人物は全て仮想の人物であり、実在する人物などとは一切関係していません。

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夏の夜の

 遠くで花火が上がった。 渇いた破裂音が、夜空に花が咲いた少し後に遅れて夜店のテントを揺らす。 洋治は紺の甚平の裾を握り、下駄の鼻緒ばかりを眺めていた。和太鼓の低温と、花火を吹き出す火薬の音が混じっていたが、彼は敢えて区別しようとしなかった。
  洋治はしきりに髪を触っては手を引っ込めた。これが彼の癖だった。 不意に、洋治の頬に冷たいものが当たった。
「わっ」
 驚いて顔を上げると、そこに幼いころから馴染んでいる顔があった。
「よっ洋治。待たせたな」
 洋治の顔に明度が増した。
「慎一」
 慎一は水風船を洋治に渡した。彼は同じく甚平を着ていた。手に持った団扇で洋治を扇ぎ、笑顔の上で髪が躍った。 ふと、洋治は慎一の連れに気が付いた。花柄の浴衣を着た、慎一と同い年くらいの女性だった。 慎一は恋人だと紹介した。洋治は微笑む彼女と強いて目を合わさなかった。
 盆踊りの同心円を眺めながら、三人は夜店を見て回った。時に綿菓子を片手に、時に金魚を片手に、時間はゆっくり流れた。 洋治は中学校の話を、慎一は高校の話を互いに聞かせた。 時折慎一と恋人は、洋治の知らない話をした。洋治はその度、大口で玉子煎餅にかじりついた。マヨネーズに鼻がつんとした。
 やがて慎一の恋人が帰るというので、慎一と洋治は駅まで見送りに行った。 慎一と恋人がこっそり手を繋いでいるのに、洋治は気付いた。洋治は駅まで口を開かなかった。 別れ際、慎一の恋人は洋治に笑いかけた。弾けんばかりの、可愛らしい笑顔だった。

「何怒ってんだよ」
 洋治は憮然としたままだった。 時間も遅くなり、人は少なくなっていた。盆踊りはすでにフィナーレを迎えた後で、会場の中央のやぐらから大太鼓が下ろされている最中だった。
「夏休みはまだ半分も残ってるって分かってるのに、何か淋しいよな」
 慎一がしみじみと言った。洋治は店じまいの作業に追われている焼きそば屋の鉄板から立ち上る湯気をじっと見つめていた。屋根から漏れた湯気は、それ以上上昇することなく消えていった。
 二人は会場を後にし、夜の住宅地を歩いた。
「洋治ってカノジョいないの?」
「いない」
 慎一は空を見ながら、ふーんと言った。
「好きな人は?」
「………」
 対照的に、洋治は地面を凝視していた。スクーターがクラクションを鳴らしながら二人を追い抜いた。ヘッドライトに対する二人の影が、二人にスクーターが近づくにつれ重なっていった。
「コクるってさ、勇気いるんだよな」

 やがて二人は、洋治の家の前に着いた。慎一がおやすみと言いかけた時、
「ん?」
 洋治は慎一の腕を握った。
「すき」
「え?」
 洋治は慎一の爪先を見つめていた。
「すき」
「誰が?」
 慎一は困惑したような、笑いが混じった声で言った。
「慎一が」
「………」
 二人の間にしばらく沈黙が流れた。 洋治の耳に血潮が流れる音がやたらと聞こえた。
「それでお前……」
 何故か自然と、洋治の目に涙が溢れてきた。
「キスして」
「え?」
 どこかで風鈴が鳴った。
「一回でいいから。もう頼まないから」
 治は初めて顔を上げ、慎一の顔を見つめた。暗闇にぼけた顔の輪郭が揺れた。
「ごめんな、洋治」
「………」
 慎一はふと笑った。そして洋治の顎を手で支え、少しかがんで洋治の唇にキスした。一回だけ。一秒だけ。 慎一はくしゃくしゃと洋治の頭を撫でた。
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テーマ:ショタ小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/08/05(水) 17:01:07|
  2. 短編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

 お久しぶりです、覚えていらっしゃいますかe-3この度FC2に復帰しました。またよろしくお願いしますe-459e-466相リンやブロとも出来ればお願いしますe-459e-466
  1. 2009/08/07(金) 15:53:38 |
  2. URL |
  3. 中裕 #UfmwQqOQ
  4. [ 編集]

中裕さん、お久しぶりです!
この度は復帰おめでとうございますm(__)m
相rンOKです。
ブロともものちほど~
  1. 2009/08/14(金) 22:28:43 |
  2. URL |
  3. イズコー #BHenOeZ.
  4. [ 編集]

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Author:イズコー
バイの某大文学部生です。少年愛の美学、ショタの文学、美少年と少年美、「艶」の定義についてなど日々考察中。

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